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2025/07/17

【現場目線で考える】コンバインは「レンタルで済む」話ではない――大型農業機械がレンタルできない3つの課題とは?

2025年6月、小泉進次郎農水相が「2000万円のコンバインを1か月しか使わないなら、レンタルやリースが当たり前の農業界に変えるべき」と発言し、大きな波紋を呼びました。この発言は、農家だけでなく、農機具販売・整備に携わる私たち現場の人間にも少なからず衝撃を与えました。

果たして、本当にコンバインは「買うよりレンタル」が現実的なのでしょうか?この問いに、農家と農機具店、両方の立場を知る者として向き合ってみたいと思います。

小泉大臣の「レンタルでいいじゃないか」という言葉は、一見もっともに聞こえるかもしれません。高額な農機具を所有せず、必要なときだけ借りられれば、経済的にも合理的に思えます。しかし、稲作農家にとってコンバインの使用時期は「年に1か月」とはいえ、その1か月がすべての農家で“ほぼ同時期”に集中するのが現実です。20haの水田を営む農家さんの場合でも、「リース会社が必要な台数を揃えられるのか? 仮に1日50万円のレンタル料を払っていたら1ヶ月で1500万円にもなる」といった率直な意見が出ています。(※1)

このような現実を踏まえたとき、「リースやシェアが効率的」とする考えには大きな無理があると感じざるを得ません。

実際に、大型コンバインのレンタル事業は過去にも試みられてきました。JA三井リースが2017年に開始した「農機シェアリース」はその代表例です。

しかし、事業は2024年度末で終了。理由は明確でした。

①繁忙期の需要が一極集中する

②運用が難しい

③採算が合わない

コンバインを収穫時期に確実に使えるよう手配するには、農家の数だけ在庫を用意する必要があります。しかもそれを1年の大半、使わずに保管しなければなりません。また、コンバインはいわゆる「季節もの」であり、1年のうち稲刈り時期は同時期に集中し、仮に十分な台数を確保した上でレンタルしたとしても故障などの修理が同時に発生した場合、限られた人数の整備士で全ての修理に対応できるのかがまず現実的ではありません。また、コンバインは非常に高額のため、リース事業者側のコスト負担が大きく、ビジネスとして成立しにくいのです。

実は私も、唐沢農機サービスに入社して間もない頃に、バインダー(※稲を刈って紐で結束する機械)のレンタルを提案したことがあります。ご高齢の農家さん達が「もう高齢だから、来年は農業辞めるかもしれないのになぁ」「稲刈りだし、1週間だけ使えればいいんだけど」と仰りながら高額な農機具を購入されるので、農家さんの負担をなくすのが農機具屋の使命だ!と意気込んだのです。ところが上司にはやはり、「1年に数日間しか使わないバインダーを一体何台用意すればいいと思う?複数台の修理が同時に発生したら整備士はどうする?レンタル料金を相当高額にしないと採算が合わないし、あまりに高額だと農家さんも手が出ないよ」と言って、提案は差し戻されたのでした。

やはり、農業の現場、農機具屋の経営を知らないと、どうしても視野の狭い思考になってしまうものです。小泉大臣の「コンバインレンタル発言」にはSNSや現場の方からも多くの批判の声があるようですが、当時の私と同じような思いから出た発言だったのだろうなと思います。

一方で、農機具レンタルには一定のメリットもあります。

例えば、年に数回しか使わない草刈り機や耕運機などは、レンタルによって初期投資を抑えられます。また、メンテナンスの手間が省ける、保管場所が不要といった利点もあります。

実際、JAは2019年から草刈り機、管理機、背負動噴、そして一部地域ではなんとコンバインのレンタルサービスを会員向けに開始しています。(※2)唐沢農機サービスでも、草刈り機や管理機、背負動噴はもちろん、薪割り機や粉砕機のチッパーに加え、トラクター、軽トラックの短期レンタルを実施しています。

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つまり、「レンタルに向いている農機具」と「レンタルに向かない農機具」があるというのが、私たち現場で働く者の実感です。

当社がコンバインをレンタル対象にしていないのも、まさに収穫時期の集中や機械の高額化・高稼働率という特性があるからです。

例えば、唐沢農機サービスで扱う主に2条刈~4条刈のコンバインは新品で200万円から600万円前後。それより大型となる6条刈などのコンバインは新品で1,500〜2,000万円もします(※3 クボタ、三菱農業サイト調べ)。その上繁忙期に1台が稼働できる期間には限りがあります。その機械を「借りたい」という農家が同時に集中したら、機械が足りないという事態は簡単に起こりえます。

また、コンバインは非常に繊細な機械で、部品トラブルが頻発することもあります。レンタル機を整備万全で貸し出すには、予備パーツや修理要員の確保も欠かせません。そうした運用コストを考えると、農家にとっても「結局コストがかかる」ことになるのです。

政府は現在、スマート農業の推進にも力を入れています。自動運転の田植え機やドローン散布機の導入を通じた省力化が進められています。

しかし、実際に導入した農家からは「省力化どころか、むしろ忙しくなった」という声も聞かれるようです。肥料散布のためのドローンを導入した農家が、購入費用を相殺するためにほかの農家からの請負で多忙になり、自分の畑の作業が後回しになるというケースもあるとのことです。(※1)

また、ドローン本体も数十万〜数百万円と高額です。高性能な農機具の導入が本当に農家の経営を助けるのかは、慎重な検討が必要です。

小泉大臣の「リース化」発言は、一見すると農家の負担軽減を考えたものに聞こえます。切実な状況を慮った結果の発言だとは思いますが、それでも「たった1か月しか使わない」ことと「その1か月が皆同じタイミング」だという事実を無視しては経営は成り立ちません。

農業は自然が相手です。収穫のタイミングを逃せば作物は商品にならず、農家は大きな損害を被ります。「農業は建設業とは違う」という前提があってこそ、現実的な政策は成立するのではないでしょうか。若き大臣に、ぜひ農家さんも企業も疲弊しない実現可能な政策で日本の農業の立て直しを図ってもらいたいですね。

農機具のレンタルは、確かに農家にとって便利な選択肢の一つです。しかしそれは、「適切な機械を」「適切な時期に」使える場合に限られます。コンバインのように高額かつ需要が集中する機械に関しては、現在の制度やインフラでは、レンタルが現実的でないケースがほとんどです。

唐沢農機サービスとしても、今後はより柔軟で現場に即した支援が求められると考えています。農業の現場に寄り添った施策こそが、本当の意味での「持続可能な農業」につながるはずです。

(※1)出典『小泉「農機レンタル」発言に農家は啞然「あまりに不勉強」コンバイン2000万円「農機高杉」問題の深刻さ

(※2)『JA農業機械レンタル事業10月から開始

JAグループ石川

(※3)クボタ 

   三菱農業機械 

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