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【農薬が原因?】発達障害児44倍増の衝撃──宮古島が直面する地下水のネオニコチノイド汚染

南の楽園の叫び:生命線である地下水の汚染
沖縄県宮古島。この島が私たちに投げかけているのは、豊かさと引き換えに、何を犠牲にするのかという、現代社会の根幹に関わる問いです。
宮古島は、川を持たない島。生活用水も農業用水も、そのほぼ全量を地下水に依存しています。サンゴ礁由来の石灰岩層が、雨水をろ過することなく地中深くに運び、地下ダムによってその貴重な水を貯めてきました。この「命の水」は、先人の教え「みっちゃ あらいあ つかいん(汚れた水は洗っても使えない)」にもあるように、島民にとって絶対的な宝であり、守り抜くべき生命線でした。
しかし、その聖域とも言える地下水が、今、深刻な汚染にさらされています。原因として最も強く疑われているのが、島の基幹作物であるサトウキビ栽培に使用される農薬、特にネオニコチノイド系殺虫剤です。
発達障害44倍増の衝撃:見過ごせない健康への負の影響
SNSやメディアで大きな議論を呼んでいるのが、宮古島における発達障害児の驚異的な増加です(※①)。参照元の記事が指摘するように、この8年間で44倍という、全国平均の2倍を叩き出す数字の裏に、地下水汚染との関連性が強く推測されています。
もちろん、発達障害の原因は遺伝的要因や様々な環境要因が複雑に絡み合っており、ネオニコチノイド系農薬との明確な因果関係は、現時点ではまだ立証されていません。しかし、複数の研究者が、この農薬成分と発達障害の関連性を指摘している事実は、もはや無視できません。
■ラット実験による神経毒性: 医学博士の木村―黒田純子氏らの研究では、ネオニコチノイドが哺乳類の神経伝達に不可欠なニコチン性受容体に直接作用する可能性が示唆されています。これは、人にも影響を及ぼし得るという強い警告です。
■「安全量」以下の影響: 神戸大学の星信彦教授は、政府が定めた無毒性量以下の濃度であっても、ネオニコチノイド系農薬(クロチアニジン)を投与したマウスが異常行動をとることを発見しました。「安全」とされるわずかな量でも、人の健康、特に感受性の高い胎児の発達期の神経に影響を与える可能性を指摘しています。
■宮古島の「地下水研究会」が行った検査では、島民の尿からネオニコチノイド系農薬の成分が検出されており、その多くが水道水を経由して摂取されたものと推定されています。
美しい南の楽園で、子どもたちの未来が脅かされている──この事態は、単なる環境問題ではなく、人権と未来への責任に関わる重大な倫理的ジレンマを突きつけているのです。
国際的な規制強化と日本の「推奨」の間の深刻な乖離
このジレンマをより複雑にしているのが、ネオニコチノイド系農薬に対する世界と日本の規制の大きな隔たりです。
ネオニコチノイド系農薬は、従来の農薬より安全性が高いとされ、1990年代から世界中で普及しました。しかし、その普及と時を同じくして、花粉媒介昆虫であるミツバチの激減など、生態系への想定外の影響が次々と報告され始めました。
その結果、欧州連合(EU)は2010年代にほぼすべてのネオニコチノイド系農薬の使用を原則禁止。アメリカ(ニューヨーク州やバーモント州など)や中国でも、規制・禁止の動きが加速しています。これらの国では、生態系や人体へのリスクを重く見て、厳格な制限を課しています。
一方、日本では、この世界的な流れに逆行し、規制が緩和される傾向にあります。特に宮古島の基幹作物であるサトウキビについて、9年前の2015年5月にはクロチアニジンの残留基準値が、従来の 0.02ppm から 0.5ppmへと、実に25倍も緩められました。
この国内外の規制の大きな違いは、日本の農業生産体制と、農薬メーカー、行政、農家が織りなす構造的な問題を浮き彫りにしています。そして、この「寛容な」国内規制が、宮古島でネオニコチノイド系農薬の供給量を2014年比で2.68倍(2021年時点)に増加させ、地下水汚染の濃度上昇を許容する背景となってしまいました。
水道水から検出されたクロチアニジンは、国の管理目標値は下回っているものの、EUの水質基準(100ナノグラム/リットル)は優に超えています。日本国内の基準は、果たして本当に「安全」の担保となっているのか、という根本的な問いを突きつけられているのです。
そして、9年前の2015年に残留基準値が大幅に緩和された時期。このタイミングは、「8年間で44倍の増加」という、子どもたちに起こった異変の始まりの時期と、暗くシンクロしているように感じられます。
農業者の「罪悪感なきジレンマ」:使わざるを得ない現実
この問題の中心にいるのが、宮古島の農業者たちです。彼らもまた、島民であり、貴重な地下水の恩恵を受け、そして子を持つ親であるかもしれません。しかし、サトウキビをはじめとする作物を安定的に栽培し、生計を立てるためには、現行の慣行農業においては農薬が命綱となっているのです。
1. 栽培継続の困難さ
有機栽培に挑戦し、収量の激減や芽が出なくなるという苦い経験から、慣行農業に戻らざるを得なかった農家の方もいるとのこと。(※②)
■労力の増大: 無農薬栽培は、除草剤が使えないため、真夏の炎天下で長時間にわたる手作業での除草が不可欠です。参照記事の60代農家の方の「無農薬でできるのは1反が限界だった」という言葉は、高齢化が進む日本の農業現場の肉体的・経済的限界を如実に物語っています。
■収量の維持: 害虫や病気の防除を農薬なしで行うことは、専門的な知識と長年の経験、そして膨大な手間を要します。「農薬を使いたいわけじゃないが、生活のためには使わざるを得ない」という農家の叫びは、生存競争に直面する農業者の偽らざる本音です。
2. 認識の壁:無自覚の使用
さらに深刻なのが、農薬に関する情報の非対称性です。ある農家がミツバチ保護のためにネオニコチノイド系農薬を避けているつもりでいたにもかかわらず、実際には商品名の下に隠れた成分がネオニコチノイド系(クロチアニジンやイミダクロプリド)であった、という事実は、日本の農薬表記の不備と、農家に対する情報提供の不足を露呈しています。(※②)
パッケージに大きく書かれた商品名に対し、一般名や系統名は小さく目立たない。これでは、専門知識のない農家が意図せず地下水汚染に加担してしまうという、極めて悲しい状況が生まれてしまいます。農家を責めることはできません。彼らは「誰にも教えてもらえなかった」被害者でもあるのです。
個々の努力を超えた課題:水資源という集合的な危機
この問題が「根が深い」とされる最大の理由は、水資源が宮古島全体の集合的な財産であるという点にあります。
農薬汚染は、特定の農地や井戸で完結する問題ではありません。島全体に広がる石灰岩の土壌構造は、農薬を広範囲の地下水へと瞬時に拡散させます。
仮に、意識の高い個々の農家が努力して無農薬栽培に切り替えたとしても、既に島全体の地下水が広域で汚染されてしまっている場合、その汚染された地下水を用いて農業を続ける限り、農薬汚染の根本的な回避は不可能です。
これは、個人の努力や道徳心に頼る段階を超え、島の持続可能性に関わる、社会全体での包括的な対策を必要とする、水質の危機です。
未来への処方箋:技術革新と構造改革
農業と農薬が切り離せない現実を認識しつつも、子どもたちの健康と島の生命線を守るために、どのような変革を起こすべきでしょうか。
1. 化学物質に頼らない代替技術の普及と開発
地下水に依存する宮古島で、水を守るためには行政が主となって減薬を推進するしかありません。農薬を使用することが当たり前の宮古島にあって、孤軍奮闘する無農薬栽培農家さんの血のにじむような努力が、汚染された農業用水によって報われない事態を防ぐ必要もあります。
■物理的・生物的防除の推進: 有機マンゴー農家が天敵の虫を利用して害虫を退治するように、農薬に頼らない病害虫防除技術(IPM:総合的病害虫・雑草管理)や、耕種的防除(サトウキビの丁寧な土寄せなど)を、行政が主導して普及させるべきでしょう。
2. 規制と情報の透明化:国内基準の見直し
■ネオニコチノイド規制の見直し: EUなどの国際的な動向、そして発達障害児44倍増という現場の深刻なデータを重く受け止め、農薬の残留基準値や使用規制について、科学的根拠に基づいた厳格な見直しを、国と自治体は真剣に検討すべきです。
■農薬情報の明確化: 農薬のパッケージには、商品名だけでなく、一般名(成分名)と農薬系統(例:ネオニコチノイド系)を、農家が一目で認識できるよう大きく、わかりやすく記載することを義務付けなければなりません。農家を無自覚の加害者にしてはならないのです。
3. 地域全体での水資源保護体制の構築
■水質汚染のモニタリング強化: 地下水、水道水、そして農家の尿検査といった多角的なモニタリングを継続し、汚染の実態を島全体で共有し、「命の水」の危機に対する意識を醸成する必要があります。
■有機農業へのインセンティブ: 有機栽培や減農薬に取り組む農家に対し、経済的な支援(補助金、買取価格の優遇など)を強化し、環境を守る農業が報われる仕組みを構築すべきです。有機マンゴーのように、高品質な農産物は高付加価値を生み出す可能性も示されています。
実は農薬使用量世界一の「農薬大国」という不名誉な称号をもつ日本(※③)。宮古島で起きていることは決して宮古島だけの問題ではなく、実際には日本各地で起きている現象の兆候のはずです。
私たちは、この美しい島が発する警告を、対岸の火事として見過ごすことはできません。地下水という集合的な資源を守り、子どもたちの未来に責任を持つ。そのために、農業の担い手、行政、そして私たちのような関連企業が、知恵と技術を結集し、痛みを伴う変革に踏み出すことこそが、今、最も求められている行動です。
新しい政権には、なにをおいても日本の農業、資源、そして子どもたちの未来を守る政策を最優先で取ってほしいと切に願います。
※①南の楽園で「発達障害児8年で44倍増」の衝撃 農薬による地下水汚染を疑う市民 因果関係は不明
※②南の楽園で「発達障害児8年で44倍増」の衝撃 ジレンマに直面する農家「農薬を使いたいわけじゃない」
※③ (日本が農薬大国と言われる理由) FAO(国連食糧農業機関)より
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