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まだ「田植え」しますか?【乾田直播】が水不足の未来を変える!?

こんにちは。ストア&兼業農家のツチヤです。
2025年の夏は、観測史上最も厳しい猛暑と渇水となり、現在も続く残暑によって全国の農家の皆様から水不足に対する不安の声が多く上がっています。特に、日本の農業の根幹である稲作は、多くの水を必要とすることから、その影響は計り知れません。当たり前のようにあった水が、ある日突然使えなくなる。そんな悪夢のようなシナリオも、決して絵空事とは言えなくなってきました。
このような危機的な状況を乗り越え、持続可能な稲作を実現するために、今、「乾田直播(かんでんちょくは)」という栽培技術に大きな注目が集まっています。
今回のブログでは、この乾田直播がなぜ水不足の切り札となり得るのか、その関係性やメリット・デメリット、そして実際の導入事例まで、詳しく解説していきます。未来の農業のために、私たちが今できることを一緒に考えていきましょう。

そもそも「乾田直播」とは?~田植えをしないお米作り~
まず、「乾田直播」とはどのような技術なのでしょうか。
従来の稲作は、育苗箱で育てた苗を水で満たした田んぼに植える「移植栽培」が一般的です。誰もが一度は目にしたことのある「田植え」の光景ですね。
それに対して乾田直播は、その名の通り、水を張らずに乾いた状態の田んぼに、直接、種籾(たねもみ)を播く栽培方法です。トラクターに専用の播種機を取り付けて、畑作のように種をまいていきます。その後、発芽・生育が進み、稲がある程度の大きさになってから水を入れるのが特徴です。
簡単に言えば、「育苗」と「田植え」という工程を省略し、畑のような状態の田んぼに種を直接播く、全く新しい発想の稲作スタイルなのです。

なぜ水不足の切り札に?乾田直播の驚くべき節水効果
では、なぜこの乾田直播が水不足対策の切り札として期待されているのでしょうか。その最大の理由は、圧倒的な節水効果にあります。
移植栽培では、田植えの前に「代かき(しろかき)」という作業を行います。これは、田んぼに水を張って土を細かく砕き、かき混ぜて平らにする作業で、漏水を防ぎ、雑草の発生を抑える目的があります。この代かきと、その後の田植え、そして稲の生育初期に、非常に多くの水(一般的に全使用量の約30%〜50%)が使われます。
一方、乾田直播ではこの代かきが不要です。水を張らずに播種し、稲がある程度大きく育って水を本格的に必要とする時期(幼穂形成期ごろ)まで入水を遅らせることができます。これにより、稲作で最も水を使う春先の時期の取水量を大幅に削減できるのです。
研究機関のデータによれば、乾田直播を導入することで、慣行の移植栽培に比べて総取水量を30%~50%削減できると報告されています。これは、まさに革命的な数字です。ダムの貯水率が低下し、取水制限が現実味を帯びる中で、この節水効果は計り知れない価値を持ちます。
環境にも優しい!節水だけじゃない乾田直播のメリット
乾田直播の魅力は節水効果だけにとどまりません。環境面においても、多くの利点があります。

- 温室効果ガス(メタン)の削減
水田は、強力な温室効果ガスであるメタンの主要な発生源の一つです。水が張られた田んぼの土壌は酸素が少ない「嫌気状態」となり、微生物が有機物を分解する過程でメタンが発生します。 乾田直播では、水を張らない期間が長いため、土壌が好気的な状態(酸素がある状態)に保たれます。これによりメタンの発生を大幅に抑制することができ、地球温暖化の防止に貢献します。 - 省力化・コスト削減
育苗や田植え、代かきといった重労働かつ時間のかかる作業がなくなるため、労働時間の大幅な短縮につながります。これにより、規模拡大を目指す農家や、高齢化・人手不足に悩む地域にとって大きなメリットとなります。また、代かき作業に使っていたトラクターの燃料代や、育苗資材のコストも削減できます。 - 土壌構造の維持
代かきは、土の構造を破壊してしまうという側面も持っています。乾田直播では代かきを行わないため、土の団粒構造が維持され、より自然に近い健全な土壌を保つことができます。これにより、稲作の後に行う麦や大豆などの裏作の排水性も向上し*水田の汎用化(畑地としての利用)も容易になります。
もちろん良いことばかりではない。導入前に知っておきたいデメリットと課題
多くのメリットを持つ乾田直播ですが、導入にあたってはいくつかの課題やデメリットも存在します。これらを正確に理解し、対策を講じることが成功の鍵となります。
- 雑草管理の難しさ
最大の課題は雑草対策です。移植栽培では、代かきと湛水(水を張ること)によって初期の雑草の発生を効果的に抑えられます。しかし、乾田直播では畑と同じ条件でイネと雑草が同時に芽を出すため、雑草との競争が非常に激しくなります。初期除草のタイミングを逃すと、収量に致命的な影響が出かねません。効果的な除草剤の体系的な使用や、雑草の発生状況に応じた的確な管理技術が求められます。 - 鳥害のリスク
播種した種籾が、カラスやスズメなどの鳥に食べられてしまう「鳥害」のリスクがあります。種籾に鳥が嫌う忌避剤をコーティングする「鉄コーティング」などの技術が有効ですが、地域によっては深刻な問題となる場合があります。 - 初期生育の不安定さ
乾いた田んぼに播種するため、播種後の天候に初期生育が大きく左右されます。例えば、極端な乾燥が続くと発芽が不揃いになったり、逆に大雨が降ると湿害で立ち枯れしてしまったりするリスクがあります。均一な発芽と初期生育を確保するための、高精度な播種技術や圃場の排水対策が重要になります。
成功事例に学ぶ!乾田直播の導入と成果
理論だけでなく、実際に乾田直播を導入して大きな成果を上げている事例も全国で増えています。
ある北陸地方の大規模農業法人では、人手不足とコスト削減を目的に乾田直播を導入しました。当初は雑草対策に苦労したものの、地域の指導機関と連携して除草剤の散布体系を確立。今では、移植栽培と遜色ない収量を維持しつつ、春作業の労働時間を約40%削減することに成功しました。さらに、浮いた時間と労力を他の作物の栽培に充てることで、経営全体の安定化にも繋がっています。
また、西日本のある地域では、毎年のように渇水に悩まされていました。そこで地域ぐるみで乾田直播(コーティング湛水直播を含む)への転換を進めた結果、農業用水の取水量を大幅に削減することに成功。取水制限が行われる年でも、安定的に米作りを継続できるようになり、地域の水資源を守りながら農業を続けるモデルケースとして注目されています。
これらの事例は、乾田直播が単なる節水技術ではなく、労働力不足やコスト増といった現代農業が抱える複合的な課題を解決し、持続可能な経営を実現するための強力なツールであることを示しています。
まとめ:未来の農業のために、私たちができること

まだまだ続く2025年の深刻な水不足は、私たち農業関係者にとって大きな試練です。しかし、見方を変えれば、これまでのやり方を見直し、より持続可能な農業へと進化する大きなチャンスでもあります。
乾田直播は、節水という直接的な効果はもちろんのこと、環境負荷の低減、省力化、コスト削減といった多様なメリットを兼ね備えた、まさに未来志向の技術です。もちろん、雑草対策などの課題はありますが、それらを克服する技術も日々進歩しています。
私たち株式会社唐沢農機サービスは、乾田直播に必要不可欠な高精度な播種機をはじめ、関連する農業機械や栽培技術に関する情報提供を通じて、農家の皆様の新たな挑戦を全力でサポートいたします。
「自分の地域でも乾田直播はできるだろうか?」 「どんな機械が必要で、コストはどのくらいかかるのか?」
どんな些細な疑問でも構いません。来るべき水不足の時代を乗り越え、次の世代に豊かな農業を繋いでいくために、ぜひ一度、私たちにご相談ください。共に学び、共に未来を切り拓いていきましょう。
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