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2025/06/17

「手植えのお田植え体験」は時代遅れ? SNSの論争から考える、子どもたちに伝えるべき農業の未来

皆様、こんにちは。広報のコイデです。

日頃より、日本の農業を支えてくださっている皆様に心から感謝申し上げます。さて、昨今は米の需給バランスに関するニュースが世間を賑わせていますが、時を同じくして、SNS上である話題が大きな議論を呼んでいるのをご存知でしょうか。

それは、全国の小学校で食育の一環として行われている「田植え体験」のあり方についてです。

発端は、ある農家の方によるX(旧Twitter)への投稿でした。子どもたちが懸命に手で苗を植えるニュース映像に対し、

「今の米農家は手植えで田植えはしていない。手植えを体験させて『農業は大変』というネガティブなイメージを子どもたちに植えつけないでほしい」

と、その意義に疑問を呈したのです。

この投稿は大きな反響を呼び、「食への感謝を学ぶ良い機会」「昔の苦労を知ることも大切」といった肯定的な意見から、「現実の農業と乖離しすぎている」「機械のすごさも同時に教えるべき」といった投稿者に賛同する声まで、まさに賛否両論が巻き起こりました。

農業の担い手不足が深刻な社会課題となる現代において、未来を担う子どもたちに農業をどう伝え、どのような体験を提供すべきか。これは、私たち農業に携わるすべての者が真剣に考えなければならないテーマです。本記事では、この「田植え体験」論争を深掘りし、農業の未来につながる教育のあり方について考察してまいります。

SNSでの議論を拝見し、私自身の過去の体験が鮮明に蘇りました。何を隠そう、私も小学生と高校生の時に、学校行事で田植えを体験した一人です。

ぬかるむ田んぼに裸足で入り、泥の感触に悲鳴を上げながら、張られた糸に沿って等間隔に苗を植えていく。中腰の姿勢を長時間強いられ、腰や背中はすぐに痛くなりました。終わる頃には泥だらけで、楽しかったという記憶よりも、「農業とは、これほどまでに辛く、厳しいものなのか」という強烈な印象だけが心に刻まれました。正直に申し上げて、将来、農業を仕事にしたいとは微塵も思いませんでした。

もちろん、土に触れること、作物が育つ過程の始まりを体験することの意義を否定するつもりはございません。そしてすべての田んぼに重機が入るわけではありません。日本の伝統的な棚田など、今も手植えをせざるを得ない田んぼの農家さんがいらっしゃることは存じ上げております。

しかし、この田植体験が「農業=苦役」というネガティブなイメージの刷り込みになってしまう危険性を、私たちは軽視してはならないのではないでしょうか。なんと言いますか…もう苦労体験だけをさせて食育の美辞麗句でひとまとめにして終わらせて良い時代ではなくなってきていると思うのです。農業人口の中央値が75歳という日本の農業。5年後にはほとんどの農家が年齢を理由に離農するでしょう。まさに日本の農業が終わるとまで言われている瀬戸際です。

農業人口が減少し、高齢化が進む中、未来の担い手となる可能性を秘めた子どもたちに対し、自ら「農業はやりたくない仕事だ」と思わせてしまうような体験を提供していては、本末転倒と言わざるを得ません。

議論の発端となった農家の方が指摘するように、現代の稲作において、全面的な「手植え」は極めて例外的です。多くは田植機によって、驚くほどの速さと正確さで作業が行われます。

同様に、収穫も「手刈り」をして、稲を束ねて「はぜかけ」で天日干しする、といった風景は、家族用の米の栽培といういわば小規模な作付けであったり、天日干しという付加価値を追求するごく一部の農家の方が実践されているものであり、決して標準的な農法ではありません。現代の主流は、コンバインが稲刈りと脱穀を同時に行い、収穫した籾は大型の乾燥機で一気に乾燥させます。

つまり、多くの田植え体験で教えられているのは、いわば「日本昔ばなし」に出てくるような古式ゆかしい農業の姿なのです。子どもたちにとっては学校での体験がすべてであり、まさかその向こうに最先端の農業機械があろうことなど想像できないものです。

ここで一つの疑問が浮かびます。なぜ、他の産業では最新の姿を見せるのに、農業だけが「原始的な体験」なのでしょうか。

例えば、子どもたちが社会科見学で自動車工場を訪れれば、そこではロボットアームが火花を散らし、最新鋭の機械が寸分の狂いもなく車体を組み立てていく光景を目の当たりにします。人気のないお菓子工場では機械だけが動き、続々と美味しそうなお菓子を作り上げてゆきます。その効率性や技術力の高さに、子どもたちは目を輝かせるはずです。

しかし、農業体験となると、突如として「便利な機械は使わせない」という空気が生まれます。日本では「若い時の苦労は買ってでもせよ」ということわざに象徴されるように、特に教育の現場において、あえて不便さや苦労を体験させることを美徳とする風潮がいまだ根強く残っているように感じます。小学生に対し、「シャープペンシルではなく鉛筆を」「モップではなく雑巾がけを」といった指導や、長靴を履かせずにあえて裸足で田植え体験さえるのもその一例かもしれません。(タレントのローラは裸足で田植えをして盛大にバッシングを受けているというのに…苦笑)

もちろん、先人たちの苦労に思いを馳せ、食への感謝の念を育むという教育的効果は計り知れないものがあります。しかし、それと同時に、「現代の農業は技術の力で、その苦労を乗り越え、進化し続けている」という事実を伝えなければ、それは単なるノスタルジーに過ぎず、未来にはつながりません。

私たち唐沢農機サービスは、日々、農業技術の目覚ましい進化を目の当たりにしています。現代の農業は、皆さんが想像する以上に「スマート」で「クリエイティブ」な産業へと変貌を遂げているのです。

GPS自動操舵システム
トラクターや田植機に搭載されたGPSが自車の位置を正確に把握し、設定したルートを寸分の狂いもなく自動で走行します。ハンドル操作から解放されたオペレーターは、作業機の調整や後方の確認に集中でき、疲労軽減と作業精度の向上を両立させます。夜間作業も可能になり、作業効率は飛躍的に向上しました。

農業用ドローン
広大な圃場の上空から、農薬や肥料を効率的に散布します。重いタンクを背負って歩き回る必要はなくなり、時間と労力を大幅に削減します。また、特殊なカメラを搭載したドローンで撮影すれば、作物の生育状況をデータとして「見える化」し、きめ細やかな栽培管理に役立てることも可能です。

ロボット、AI技術
収穫作業を自動で行うロボットや、AIが画像から病害虫を診断してくれるシステムなど、これまで熟練の経験と勘に頼ってきた作業をテクノロジーが代替・支援する時代が到来しています。

これらの技術は「スマート農業」と呼ばれ、農業を「キツイ、汚い、危険」といった従来の3Kイメージから、「カッコよくて、稼げて、感動できる」新しい産業へと転換させる大きな可能性を秘めています。腰をかがめて延々と続ける作業ではなく、タブレットを片手にデータを分析し、戦略的に作物を育てる。そんな未来が、もう目の前まで来ているのです。

では、子どもたちに農業の希望を伝えるためには、どのような体験学習が求められるのでしょうか。そのヒントが、全国有数の米どころ、新潟市の取り組みにあります。

新潟市では「食と農のわくわくSDGs学習」と題し、従来の農業体験にとどまらない、探究的な学習を推進しています。このプログラムでは、子どもたちはスマート農機の見学や、最先端の品種改良について学ぶ機会が与えられます。市の担当者は、この取り組みの目的を「農業のネガティブなイメージを転換させ、持続可能な食や農の未来について考えるきっかけを提供すること」だと語ります。

興味深いのは、新潟市でも「手植え」や「手刈り」体験が全く行われていないわけではない、という点です。伝統的な農作業を体験した上で、現代の進化した農業技術に触れる。このハイブリッドなアプローチこそが、子どもたちの深い学びに繋がるのではないでしょうか。

私たちが提案したいのは、まさにこのような「物語性のある」農業体験です。

Step 1【体験】昔ながらの苦労を知る
まずは、従来通り手植えを体験します。泥の感触、腰の痛み、一株一株植えることの大変さを肌で感じます。これは、食への感謝の原点となる重要な体験です。

Step 2【驚き】機械化のインパクトを知る
手植えの後、子どもたちの目の前で田植機が圃場を走り抜けます。手作業とは比較にならないスピードと正確さに、子どもたちは「文明の利器ってすごい!」と大きな衝撃と感動を覚えるはずです。

Step 3【未来】スマート農業の可能性に触れる
最後に、GPSで自動走行するトラクターや、空を舞うドローンを見学します。農業が最先端技術と結びついた、未来志向のカッコいい産業であることを示します。

この一連の体験を通じて、子どもたちの心には「昔の人は大変だったんだな。でも、今の農業は技術の力でこんなに進化しているんだ!面白そう!」という、ポジティブで未来志向の印象が強く残るに違いありません。

もちろん、こうした理想的な農業体験を実現するのは容易なことではありません。

静岡県で長年、体験に参加する子ども達の健康への配慮から無農薬の田んぼ体験を提供してきたNPO法人の事例では、無農薬ゆえの雑草管理の大変さや、近隣農家への配慮、さらには参加者の保護者からのクレーム対応といった、知られざる苦労があったといいます。善意やボランティア精神だけで、安全かつ教育的価値の高い体験を継続的に提供するには限界があります。

理想の農業体験を実現するためには、受け入れる農家や団体の努力だけでなく、行政や我々のような民間企業、そして地域社会全体が連携し、支えていく体制を構築することが不可欠です。

SNSで巻き起こった「田植え体験」論争は、日本の農業が抱える課題と、未来への希望を同時に浮き彫りにしました。

子どもたちに伝えるべきは、過去の「苦労」だけではありません。その苦労を乗り越えるために先人たちが知恵を絞り、技術を発展させてきた「進化の物語」と、その先にある「希望に満ちた未来」です。手植え体験は、その物語をよりドラマチックに伝えるための、最高の「前フリ」になり得ます。

地域の教育機関は農家の皆様と連携し、子どもたちが最新の農業機械に触れ、農業の本当の魅力と可能性を感じられる機会を創出していくことが重要だと感じます。

この記事が、日本の農業の未来について、皆様と共に考える一助となれば幸いです。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

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