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食料自給率ゼロの都市が、なぜ米不足と無縁だったのか?泉大津市・南出賢一市長が築いた「自治体間農業連携」の全貌

皆さま、こんにちは。24年夏から米不足が騒がれるようになって以来、日々の食事が子どもたちの健やかな成長にいかに重要であるかを痛感している一介の主婦、コイデです。
さて、昨今、異常気象や生産者の高齢化、国際情勢の変動など、日本の「食」を取り巻く環境は厳しさを増しています。食料自給率が4割に満たない我が国において(肥料や飼料をほぼ100%輸入に頼っている現状から、実質的には5%の食糧自給率とも言われています)、主食である米の安定供給は、国民生活の根幹を揺るがしかねない喫緊の課題と言えるでしょう。
昨年、この国の供給システムの重大な欠陥が明るみに出ることになった「令和の米騒動」が発生しました。日本中が混乱に見舞われる中、平時と変わらず市民に安定的に米を供給し、子どもたちの給食を守り抜いた自治体があります。
それが、大阪府泉大津市です。
なぜ、市内にほとんど農地を持たないこの大阪の一都市が、食料危機を乗り越えることができたのでしょうか。
今回は、農業に関わる企業の広報担当として、そして次代を担う子どもを持つ一人の親として、深く感銘を受けた泉大津市の先進的な取り組みをご紹介します。この事例には、日本の農業と地域社会が持続可能な未来を築くための、重要な示唆が数多く含まれています。
危機の本質を見抜いた、市長の現場主義
この卓越した仕組みを主導したのは、泉大津市長の南出賢一氏です。氏が食料危機を予見できた背景には、徹底した現場主義がありました。
市長は就任以来、全国の農村地帯へ足繁く通い、生産者の声に直接耳を傾けてきました。そこで目の当たりにしたのは、日本の農業が直面する構造的な課題でした。
「このままでは、あと5年もつか分かりませんよ」
これは、市長が農家から直接聞いた、偽らざる心の叫びです。
農家の平均年齢は70歳に迫り、後継者不足は深刻化しています。追い打ちをかけるように、肥料や生産資材の価格は高騰を続け、採算が合わない状況に多くの農家が苦しんでいます。国の減反政策も相まって、生産意欲の維持すら困難な状況が、日本の農業の現実なのです。
私も業務を通じて農家の皆様とお話しする機会がございますが、この現実に日々直面し、日本の食の未来に強い懸念を抱いておりました。
食料自給率がほぼゼロに等しい泉大津市にとって、この問題は「対岸の火事」ではありません。供給網が途絶えれば、真っ先に打撃を受けるのは自らの市民です。「市民の命を支える食料を、市場原理だけに委ねてはならない。率先してそれに備えることこそ、基礎自治体の首長の責務である」。この強い使命感が、泉大津市の取り組みの原動力となりました。
持続可能な関係を築く「自治体間農業連携」という革新
「国が動かないのであれば、我々が新たな潮流を作る」。その決意のもと、南出市長が構築したのが「自治体間農業連携」という画期的なシステムです。
その骨子は、極めてシンプルかつ合理的です。
1.生産地の自治体と消費地の自治体(泉大津市)が、直接協定を締結する。
2.泉大津市が「安定的な大口需要家」として、生産者から年間を通じて計画的に、市場価格の変動に左右されない適正な価格で米を直接購入する。
3.購入した米は、市内の小中学校や保育施設等の給食、あるいは子育て支援事業を通じて市民へ還元する。
この「生産と消費の直結」は、双方に計り知れないメリットをもたらしました。
【生産地側のメリット】
・経営の安定化: 収穫期の価格変動リスクから解放され、安定した収入が見込めるため、生産者は安心して付加価値の高い米作りに専念できます。
・生産意欲の向上: 「泉大津市の子どもたちのために」という明確な供給先があることは、金銭的対価以上の誇りとやりがいに繋がります。
・遊休農地の活用促進: 安定した需要が生まれることで、耕作放棄地の再生や増産への意欲が喚起されます。
【泉大津市(消費地)側のメリット】
・食料の安定確保: 平時から構築された強固なパイプにより、有事の際も市場の混乱の影響を受けずに、市民のための食料を確実に確保できます。
・トレーサビリティの確保と質の向上: 生産者の顔が見える関係性は、安心・安全の担保に繋がります。有機栽培米や減農薬米など、質の高い食材を子どもたちに提供することが可能になります。
・流通コストの最適化: 中間流通を排したシンプルなサプライチェーンは、コストの安定化にも寄与します。
この取り組みは、日本全体がまだ危機を実感していなかった2023年夏から本格的に始動。北海道から沖縄まで、南出市長の理念に共感した9つの市町村との連携が実現し、年間150トンもの良質な米の安定供給ルートが確立されました。これは、単なる売買契約を超え、相互扶助の精神に基づいた新たなパートナーシップの形と言えるでしょう。
そして迎えた2024年夏。”令和の米不足”に日本中が震撼する中、泉大津市だけは、前年から築き上げてきたこの独自のシステムにより米の供給を滞らせることなく、平時と変わらぬ市民生活を守り抜いたのです。
「医食同源」を市政の柱に。未来への投資としての食育
泉大津市の取り組みが素晴らしいのは、食料安全保障の実現に留まらない点です。その根底には、「医食同源」という哲学が流れています。すなわち、健康な心身は日々の良質な食事によって育まれるという考えを、市政の中心に据えているのです。
その象徴が「オーガニックブリッジ」構想です。自治体間連携という「ブリッジ」を通じて、有機米や特別栽培米といった付加価値の高い「オーガニック」な食材を流通させ、それを次代を担う子どもたちの給食や、妊婦への支援に活用しています。
特筆すべきは、北海道旭川市との連携です。年間20トンの有機米の供給を受ける両市は、全国で初めて「生産地」と「消費地」が共同で「オーガニックビレッジ宣言」を行いました。これは、農業連携の新たな価値を創造する画期的な試みとして、高く評価されています。
さらに、この連携は質の高い「食育」の機会を創出しました。泉大津市の小学生が「こども特派員」として旭川市の有機農家を取材し、自分たちが口にする給食の米が、どのような人々の想いや労苦によって作られているかを直接学ぶ。このような体験は、教科書では得られない、食への感謝と農業への理解を育む貴重な機会となったはずです。
また、物価高騰の折にも「給食の質は絶対に落とさない」という方針を貫き、市が独自に予算を増額している点も注目に値します。「子どもの成長こそ最優先の投資である」という市長の揺るぎない信念は、未来を見据えた行政の在るべき姿を示しています。最近、SNS上では「これが今の小学生の給食か」と、その質素さに驚くような給食の写真が投稿され、議論を呼ぶことがあります。物価高騰の煽りを受け、子どもの食環境にしわ寄せが及んでいるのではないかと、胸が痛む光景です。
こうした現代の風潮の中、泉大津市の「子どもの成長が最優先」という揺るぎない信念に基づいた取り組みは、まさに一筋の光のように感じられます。給食の質を維持、向上させるために市が独自に予算を投じるという決断は、未来への投資として極めて価値の高いものだと、一人の親として深く共感いたしました。
幸い、私が暮らす長野県の東信地域では、地元の食材をふんだんに使った彩り豊かな給食が提供されており、子どもたちも毎日献立を眺めては学校へ行くのを楽しみにしています。この当たり前のように見える幸せな風景が、日本中の子どもたちのもとで、いつまでも続いてほしい。泉大津市の事例は、その実現に向けた大きな希望とヒントを与えてくれたように思います。

泉大津市が示す、日本の未来への処方箋
「令和の米騒動」は、日本の食料システムの脆弱性を浮き彫りにしました。効率化と市場原理を追求するあまり、私たちは食料生産の現場と、それを支える人々への敬意を忘れかけていたのかもしれません。
泉大津市の挑戦は、この課題に対する一つの明確な回答です。それは、生産者と消費者が顔の見える関係で支え合い、地域の未来を担う子どもたちの健康を第一に考えるという、社会の根源的な価値観に根差した、未来への処方箋と言えるでしょう。
特に、和歌山県日高川町と連携した「マタニティー応援プロジェクト」では、妊婦に栄養価の高い「金芽米」を届けるなど、市民のライフステージに寄り添ったきめ細やかな支援を展開しています。今後は、市民が日常的にこの米を手に取れるよう、コイン精米機の設置も構想しているとのこと。そのビジョンは、一貫して市民の健康増進へと繋がっています。
私たち唐沢農機サービスも、農業機械を通じて日本の農業を支える一員として、この泉大津市の事例から多くのことを学びました。生産者の皆様が安心して農業を継続できる環境を整えること。そして、食と農の重要性を社会に広く伝えていくこと。その両輪が、日本の農業の持続可能性を確かなものにすると確信しています。
泉大津市が灯したこの希望の光は、食料問題のみならず、地方創生、健康寿命の延伸、そして次世代教育といった、我が国が抱える複合的な課題を解決へと導く、大きな可能性を秘めています。
この先進的な取り組みが、一つの自治体の事例に終わることなく、日本各地へと広がり、大きなうねりとなることを心から願ってやみません。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
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